苦手なりの受験英語(アルク版)

勉強法。苦手な人へ・指導者へ(6)

まずお詫びです
・予定では2日に更新する予定でした。更新が1週間伸びたことをお詫び致します。大変申し訳ありませんでした。

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英語が得意な人や英語の先生の指示は、基準が「得意な人用」。

テーマ
その指示の量と質は適切か?

苦手な人へ
ケースを2つ考える。
(1)学校の宿題(特に、夏休みや冬休みなどの長期休暇期間の宿題)
(2)宿題以外に何かやる場合

(1)学校の宿題...をまず考える。
レベルの高い高校であればあるほど、信じられない質と量の宿題が課されるはずである。
例を挙げよう。
私の受け持ちのある生徒(高2)の場合、この冬休みに「4回分のセンター試験英語予想問題」が課された。
・「質」を考える
この問題を見たがこれがレベル高い! 普通、高2用の模試ならば、実際のセンターよりはるかに難易度を下げた問題になる。しかしこの宿題は高3&浪人用のレベルだった。単語、文法、長文、全てが難しい。英語が苦手な生徒に「なぜこれが答えになるのか」を説明するのに恐ろしく時間が掛かった。生徒に1回分の75%を解説するのに「8時間」かかった。私の生徒もよく我慢したものだ。
・「量」を考える
そんな問題が4回分だ。1年分だってまともに解きたくないはずである。だが「宿題」なのでやらばければならない。
まともに全部やる必要はないと思う。ただし1部でいいのでちゃんと解いておくべきだ。なぜなら「得意な人は全部ちゃんとやるのだから」。残念だが「この宿題を全部やり切れるような人たち」と入試では勝負するのだ!
ちなみに私の授業(個人コース)では、長期休暇は宿題の手伝いを一緒にやる。予習の必要はない。授業を受けるだけで宿題が進むようにする。

(2)宿題以外に何かやる場合
英語が苦手な人が「英語をなんとかしょう」と思った場合、市販の本(参考書)などの教材を求めがちである。おせっかいな英語が出来る人(先生を含む)が「この本がいいよ〜」と薦める場合がある。薦められた教材は少なくとも最初は「やりたくなる」はずだ。英語の成績を伸ばしたいという気持ちが強いからだ。
しかし大概の場合、難易度と量が苦手に合っていないはずだ。
例を挙げよう。
・インターネットの掲示板の質問で
 「私は高校生ですが、中学英語ですらよくわかりません。どうしたらよいでしょう?」
という質問があった。真っ先にされた返事は
 「英語版 Newsweek を取り寄せて読みまくりましょう。私はこれで英語がものすごく得意になりました」
というものだった。
 中学英語が分からない人が Newsweekなど読める訳がないのはあきらかだろう。しかしこの人は"真摯"にそう答えていた。よほど自分の意見に自信があるだろう。さらに「如何に Newsweek が良いか、英語版のNewsweekの取り寄せ方」などを切々と述べていた。私にはとても滑稽に思えた。

 仮に何かやるとしたら、難易度と量が合っている教材をやるべきだと思う。しかし得意な人はあなたに合う難易度や量の教材を見つけるのが難しいと思う。
しかし、仮に適切な教材があったとしても、まず「やれない」と思っている。それより先に「宿題」や「定期テスト対策」をやらならければならないはずだから。しかも宿題なら「信じられないほどの量と質」なのだ。とてもとても他の教材など出来る訳はない。
正直私は「宿題や定期テスト対策以外に新たに何かやること」は、よほどのことがないと難しいと思っている。それより「宿題や定期テスト対策」をできるだけちゃんとこなすべきだと思う。

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指導者へ
ケースを2つ考える。
(1)学校の宿題(特に、夏休みや冬休みなどの長期休暇期間の宿題)
(2)宿題以外に何かやる場合

(1)学校の宿題
上でも説明したが、今の私の生徒(高2)に出された冬休みの宿題は「センタ予想問題4回分」である。おそらくあなたなら、「あなたが高2の時なら、1回分をせいぜい2時間ぐらいで終わらせられた」であろう。それが4回分ならば大したことはないだろう。とでも思うのではないか?
おそらく英語が得意な人には「ちょうど良い質と量」なのだと思う。しかし苦手な人の場合、「エベレスト登山」のような難易度、「日本の借金」のような量である。

毎度おなじみの手段だが、「数学」と取り替えよう。
冬休み(約15日間)で「センターの数学の問題4年分を解いてこい!」...こういう宿題が課されたら、あなたは、まともに解くだろうか?
数学嫌いであればあるほど、1年分すらまともに全部解かないと思う。

これと同じことだ。英語の苦手な生徒にも同様のことを課す英語の先生は存在するのだ。
これは学校の英語の先生に言いたいのだが、「もっと質と量を減らす宿題を課すこと」はできないだろうか?
宿題は「英語が得意な人が物足りないと思える質と量」でちょうどいいと思う。仮にどんなに物足りなくても、英語が得意な人は、放っておいても勝手に「英語版 Newsweek」など読むなどして自分でどんどん補充する。なので、過剰な宿題など出さなくても自主的に英語力のUPを図るはずだ。

(2)宿題以外に何かやる場合
 あなたの場合、「英語の宿題なんぞ、ぱっぱと終わらせた」はずである。さらに何かの英文でも読んでいられたと思う。中にはペーパーバックでも読んでいた人もいるのではないか?
 しかし「英語が苦手な人」の中にはそんな人はいない。読める訳がない。読むはずがない。どんな易しい「英語教材」だってやらない。幼児向けの英語教材だって読む気が起きないものだ。

毎度おなじみの手段だが、「数学」と取り替えよう。
数学ができないあなたは、数学が出来る人から、こうアドバイスされたとしよう
「この【易しい高等数学問題集】を全部やろう。全200Pだ。」
断言するが、「絶対にこのアドバイスに従わない」はずだ。仮にやったとしても最初の3問ぐらいだろう。
小学生向けの超易しい「算数ドリル」を渡されたってもしかしたらやらないはずである。

あなたが高校生の頃なら、それよりも先に「数学の宿題を片付ける」ほうを優先したはずである。違うだろうか?

英語が苦手な人はそれと同じなのだ。宿題や定期テスト以外に自主的に何かやることなどまず不可能である。

★まずは「宿題を得意な人向けに合わせるのを止めて欲しい」と私は強く願う。

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マウスバードの一言

上記の私の生徒が課された「4回分のセンター試験予想問題」について話したい。どう考えても質と量が過多すぎると感じた。
私が浪人したときの早稲田予備校の授業カリキュラムを思い出した。

この生徒が冬休み(約15日間)で課された宿題の量、すなわち、
「4回分のセンター試験予想問題」の量
  は
⇒「私が浪人時に4月中旬〜6月上旬(約50日間)でやったぐらいの量」
ぐらいだと思った。

ちなみに、私が予備校で入ったクラスは「私大向けの最難度コース」である。
浪人ということは、高3を1度やっているのだ。高3終了の直後のカリキュラムの50日分を15日間で「高2」がやらなければならない...という現実に愕然とした。
ちなみに、私には現在浪人生の受講者もいる(英語がかなり得意・センター8割は通常余裕)が、この生徒にだって12月頃に「15日間で4回分のセンター予想問題を解いてこい」なんて言えない。
他の科目の課題だってあるのだ。

したがって生徒のこの冬の宿題を知ったとき、「たった15日間なんかで、まともに出来る訳がない」と思った。
しかもだ。予備校の場合は、授業で詳しい解説もつく。しかしこの宿題の場合「課されただけ」である。解説の「カ」の字もない。
この「予想問題集」の質はそれなりに良いものであるだけに、非常に「もったいない」と思った。

実のところ、私も高校時代、この生徒と同じぐらいの質と量の宿題を夏休みや冬休みに課された。もちろんまともやった覚えはない。友人のノートを以下に借りて写せるかが勝負であった。

「高校ってどうしてこんな非効率的な宿題を出すのだろう?」と私はとても不思議に思う。

今週の金曜日は文法放送。来週はセンター試験の講評です。
この続きは再来週の月曜日です。

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