シリーズとシリーズの間は雑談です。雑談も随分久しぶりな気がするなあ。
私の好きな小説の話です。「銀河英雄伝説」という小説です。もう30年ぐらい前の小説です。カテゴリー的にはSF小説に分類されるのでしょうが、たまたま未来の宇宙の話が設定されているだけと考えられると思います。最近、また読み直しているのでその話を少々させて下さい。
話は今から約1600年後の世界。人類は既に生活の拠点を宇宙に置いている。地球は既に「人類発祥の地」という価値しかなくなった。数々の星々(太陽系外の恒星を太陽とする惑星)に居住を移している。そこでは人類は概ね3つの勢力に別れている。皇帝を仰ぎ専制政治を敷く「銀河帝国」、民主共和制を唱える「自由惑星同盟」、商業を中心とした「フェザーン自治領」。
「銀河帝国」と「自由惑星同盟」は100年もの間、戦争を続けている。この戦争のさなか、銀河帝国には「ラインハルト・フォン・ローエングラム」という若き美貌の天才が現れる。一方自由惑星同盟には「ヤン・ウェンリー」という歴史家志望だった天才用兵家が現れる。互いが憎しみ合うわけでもないのに、概ねイデオロギーの違いという理由だけで戦い続ける。…と私がいくら述べても銀英伝(銀河英雄伝説の略)の面白さは伝わらないでしょうな…。
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ここでは「ヤン・ウェンリー」という人物を紹介したいのです。彼は「ミラクル・ヤン」「ヤン・ザ・マジシャン」という異名があります。しかし本質は「矛盾の人」という言われ方が非常に適切です。「どう矛盾なのか?」これを説明したいのです。
・ヤンは、非常に温厚・温和の性格で戦争が大嫌い。しかし、彼が兵を動かすと戦いは負けたことがない。圧倒的な不利な戦いでも、味方の損害を最小限にして勝利してしまう。
・ヤンは民主主義がイデオロギーの地域に生まれたが、民主主義が最高の理念とは限らないと考えている。
・ヤンは、自国の民主主義国家元首に実力を妬まれ、命さえ狙われる。ヤンは自分の国家元首を憎んでいるが、その政治体制(民主主義)と、時には国家元首を守るために戦う。
どうでしょう? 矛盾だらけではないでしょうか?
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私が銀英伝で一番感銘を受けた点は、ヤンが考える「信念」という言葉に対してです。銀英伝を読む前は「信念」という言葉を肯定的に考えていました。しかし銀英伝を読んだ後では、逆に「信念」という言葉を否定的に捉えるようになりました。
まず比較対照?として、今年ノルウェーで92人殺害したテロ犯のツイッターの投稿を紹介しましょう。
「信念を持つ1人の人間は、利益しか考えない人間10万人分の力を持つ」
↑これを読んだとき、私はすぐさま、ヤンの次の言葉を思い出しました。
「信念のために人を殺すのは、金銭のために人を殺すより下等なことである。なぜなら、金銭は万人に共通の価値を有するが、信念の価値は当人にしか通用しないからである。」
「信念とは願望の強力なものに過ぎず、なんら客観的な根拠を持つものではない。それが強まれば強まるほど、視野は狭くなり、正確な判断や洞察が不可能になる。」
「信念とは、過ちや愚行を正当化するための化粧であるにすぎない。化粧が厚いほど、その下の顔は醜い。」
あなたはどう思いますか?
銀河英雄伝説は非常に面白いです。もし小説を読むのが苦手であれば、アニメでもOK。ぜひ多くの人に楽しんでいただきたい作品です。良かったらぜひお楽しみください!
今週は金曜日に文法放送を行います。