苦手なりの受験英語(アルク版)

なぜ英会話能力が身につかないのか?(7)

原因5・できない理由を『若さ』の所為だと信じている
 これは社会人の英語学習者がよく使う「言い訳」である。「私はもう学生時代と違って、若くないのでそう簡単に記憶できない。」と良く言うのだ。これは次の3つの意味に取れる。

1・13歳〜20歳前後の頃が一番記憶しやすい時期なんだから、今の(社会人の)私はなかなか英語が身に付かなくて当然だ。
2・13歳〜20歳前後の頃が一番記憶しやすい時期なのに、英会話が出来ないのは、学校教育が悪い所為だ。
3・(親が子供にいうセリフ)13歳〜20歳前後の頃が一番記憶しやすい時期なんだから、お前が英語ができないのは怠けているだけだ。

 順序を逆にして話したい。

3・(親が子供にいうセリフ)13歳〜20歳前後の頃が一番記憶しやすい時期なんだから、お前が英語ができないのは怠けているだけだ。
 実のところ、↑これは私の親が中学高校の頃の私によく言ったセリフである。私が中学・高校でスーパー落ちこぼれで赤点ばかり取っていた。この頃、私の親は私によく決まってそう言ったものだ。当時ものすごく腹が立った。毎年成績が悪すぎて落第の危機だったのだ。落第なんかしたくないに決まっているではないか。落第だけはしないように精一杯努力していたのに、こう言われたのである。

 そもそも「13歳〜20歳前後の頃が一番記憶しやすい時期」…というのは客観的なデータを根拠にして言っているのだろうか? 少なくとも私の親は違った。私の親は「自分の若い頃がそうだった」という自分の感覚を私に言っていたに過ぎなかったのである。ちなみに私自身は25〜30歳ぐらいがそれなりに一番上手く記憶できた時期の気がする。

今から当時を振り返れば、記憶力よりも「別のこと」を考えれば良かったと感じている。なぜなら急に記憶力が良くなるわけでもないからである。

「当時、誰か信用ある人に英語を習えばよかった」と私は後悔している。「英語がスーパーできない人ができるようになった例を探せば、誰かに習わないで得意になった例は、長い日本の教育の歴史でただの1例もない」…ということが随分後になってから悟った。しかし当時の未熟な私は、「人に習う」という選択は絶対に取らなかっただろう。なぜなら当時の私は「自分だけで何とかしなければ負けだ」みたいなプライドがあったから。また何より、英語教師という人種をまともな人間と思っていなかったからだ。英語教師という人種は1人の例外なく、「英語はできなければならない、英語ができて当然、英語は楽しいはずなのに、なんでお前は楽しまないのだ?」などと自分の主観を押し付ける人【しかいない】と考えており、そんな英語教師たちとは一緒に呼吸もしたくなかったからである。

 しかし、浪人時に私が通った予備校の英語の先生がたのほとんどがそんな主観の押し付けをしなかった。予備校の英語の先生方からは「英語なんて地球星英米地方方言だ。できなくても何の恥でもない」と教わった。なんと救われた言葉であろうか! だから浪人時の私は英語を学習する気が出たのである。そして今では自分が英語の先生なんかやっているのである。
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2・13歳〜20歳前後の頃が一番記憶しやすい時期なのに、英会話が出来ないのは、学校教育が悪い所為だ。
 これは皆さんの多くが考えているの反対の意味で私は同意である。
 皆さんの多くは「会話がないがしろで、文法ばかりやらされるから、学校教育がよくない」と考えていらっしゃると思う。
 私は逆である。「文法こそががないがしろで、文法をしっかりやらされていないから、学校教育がよくない」と考えている。詳しくは前回の話を参照して欲しい。
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1・13歳〜20歳前後の頃が一番記憶しやすい時期なんだから、今の(社会人の)私はなかなか英語が身に付かなくて当然だ。
 社会人が自分に言うせりふならば、これは完全な言い訳である。そんなことはない。ちゃんとできる。この「なぜ英会話能力が身につかないのか?(3)」で紹介したG!さんは、IELTSで良い成績をとって現在イギリスの大学院に留学予定だが、G!さんは 50歳 である。50歳のG!さんは、約半年間、私と一緒に学習したら、イギリスの大学院に受かるほどの英語力を身に付けてしまったのである。
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金曜日はいつもの文法放送。この続きは来週の火曜日です。
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