苦手なりの受験英語(アルク版)

なぜ英会話能力が身につかないのか?(10)

原因8・喋り続けないと喋れないのにそうしない(できない)

 1997年に起こった東電OL殺人事件というものがある。この犯人とされたネパール人、ゴビンダ・プラサド・マイナリ氏は一審無罪、控訴審での逆転有罪、上告棄却、再審決定を経て、2012年に無罪が確定した。彼が真犯人かどうかは少なくとも私には定かではない。ここで話したいのはその話ではなく、「言語の話」である。

 マイナリ氏は、無罪確定後にネパールに帰国している。このとき現地のネパールで記者会見が行われた。この様子が当時日本でもテレビのニュースやワイドショーで紹介された。この記者会見で、私は大いに驚いた。

 マイナリ氏は質問の受け答えが全て日本語であった。別に日本人の記者の質問に答えていたわけではない。
ネパール人の記者がネパール語でした質問を通訳が日本語に直して、それをマイナリ氏が聞いて、マイナリ氏は日本語で返事をしていたのである。5年以上日本で日本語で生活をしていたマイナリ氏は、母国語であるネパール語をすっかり忘れていたのである。

 ここからどういうことが言えるのか? 言語は喋り続けないと、母国語でさえ忘れてしまうということである。

 また、これは人伝えに聞いた未確認情報だが、パックンマックンのパックン(アメリカ人)は、英会話番組に出演する前には英会話学校で「英語を話してから」出演するという。

 さて、↑以上から英会話の学習について考えよう。

 例えば1週間に1度だけ、90分程度の英会話のレッスンがあったとしよう。はたして1週間前に習った英語はどの程度頭に残っているだろうか? 0とは言わないが、残り難いものである。少なくとも毎日喋る訓練をする人には負ける。つまり、英語をきちんと喋り続けるためには、理想は毎日英語を喋り続けなければならないと私は思うのである。

 ではあなたに英語を毎日かそれに近い感覚で喋り続ける環境があるだろうか? あれば英語が使いこなせるようになる確率は高いだろう。

 参考までに。
 ・私が英語がペラペラだった時期は1週間程度だが、それは「その前の1週間、英語だけで生活(日本語を喋ったら罰金という生活)」をしていたからである。この辺参照。
 ・私の師匠の1人・宮本守良氏は、学生時代、1人のアメリカ人と同部屋の寮に住んでいた。彼ら2人は共同生活において1つのルールを作ったそうだ。それは、1日置きだったか、1週間置きだったかで、英語のだけ日(もしくは英語だけの週)、と日本語だけの日(もしくは日本語だけの週)を作ったのだ。彼らはそうやってお互いの英語力と日本語力をアップさせていたという。

 こういうことができないと、普通の人がしっかりとした英会話力を身に付けることは難しいと思う。なお英語をペラペラと喋っていた時期の私は日本語なんか一切考えていなかった。当時、どうしても日本語を喋らなければならない場合、私は最初に英語を思いついてそれを日本語に直して喋っていた。これは当時とても面倒な作業であった。

 金曜日はいつもの文法放送。この続きは来週の月曜日です。

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